ビリヤードをプレイする際、ショットをする直前にキューにチョークを塗ります。
テレビなどで、ビリヤードのゲームを観ても必ずチョークを塗っています。
ただ、実際のところ「なんとなく皆んなが塗っているから」という理由で塗っている人も多いと思います。
そこで、チョークの効果と正しい塗り方について紹介します。
チョークを塗る意味
ビリヤードでは、キューと呼ばれる棒状の用具でボールを撞きますが、そのキューの先端に付いている部品をティップといいます。
ティップは牛や豚の革で作られた厚さが5〜9mmの部品で、ショット時の衝撃を吸収するとともに、
ボールと接触する際の摩擦により回転をかける目的があり、ビリヤード競技において重要な部品となります。
そして、ティップはボールと接触できる唯一の部品となりますが、そのままの状態では撞いた瞬間に滑ってしまい、
ボールに回転を掛けることはおろか、真っ直ぐボールを撞けないというミスショットの要因にもなります。
それを回避するためにティップの表面にチョークを塗るのです。
チョークが塗られたティップは摩擦係数が高まり、
キューの力をそのままボールに伝達できるようになるとともに、狙い通りの回転も掛けられるようになります。
チョークの歴史
昔は、ビリヤードのキューは普通の木の棒が使われていました。
その先端を丸くし、「マジックパウダー」と呼ばれる石灰の粉を塗ることで、少しでも摩擦を上げボールに僅かな回転を与えていました。
その後、1807年にフランスのフランソワ・マンゴー氏によってティップが発明され、より多くの回転を与えることが可能となりました。
そして、アメリカのウィリアム・A・スピンクス氏によって炭酸カルシウムと研磨剤を混ぜた現在のチョークが発明され、
更に大きな回転を安定して与える役目としてビリヤードに革命をもたらしました。
この進化により、マッセなどの特殊なストロークも開発され、ショットのバリエーションも増えていきました。
チョークの塗り方
先に、チョークの目的は滑り止めと言いましたが、そのため正しい塗り方をしないと十分な効果が発揮されません。
ビリヤード場に置いてあるチョークをみると真ん中が凹んでいるものを多数見かけますが、
実は正しくない塗り方によって凹んでしまったものなのです。
ティップの先端にグリグリと擦り付けるようにチョークを付けると、結果的に真ん中が凹むことになりますが、
それではティップの中心部分にしかチョークが付着せず、ボールの中心以外を撞く場合にミスショットのリスクが高まります。
本来の役目として、ボールの上下左右を撞いてより多くの回転を掛けたい時にチョークの摩擦力が必要となりますので、
チョークを塗るべきポイントは中心ではなく周りの丸くなっているエッジ部分です。
ですので、ティップのエッジ部分をチョークの中心に押し当て、外側に向かってティップを回転させながらエッジ全体に塗っていきます。
このような塗り方をするとチョークの削り跡がX状になっていきます。
そうしていくことで、綺麗にエッジ部分にチョークを塗っていくことができます。
次にチョークを塗る頻度ですが、これについても個人差が大きく、人によってはショット毎にルーティーンとして塗っていたりもします。
実際のところは、チョークが落ちてしまい狙いのグリップ効果が無くなる前に塗るのがベストとされています。
しかしながら、先にも述べましたがチョークには研磨剤も入っているため、チョークを塗るたびにティップは摩耗していってしまいます。
ティップを長持ちさせたいのであれば、必要最小限の回数にとどめておいた方がよいでしょう。
マイチョークの必要性
娯楽でビリヤードを楽しむ際は、一般的にはお店の道具を借りることができるため、ほとんどの人が手ぶらで行くと思います。
その中でも拘りの強い人はマイキューを持参してプレイする姿も見られます。
上達してくるとショットのバリエーションも増えてくるため、お店のキューでは物足りなさを感じるようになり、
それゆえマイキューを購入するという流れになると思います。
ただ、マイキューを使っている人でもチョークに関してはお店に備え付けのものを使っているケースも多く、
マイチョークまで持っている人は少ないかもしれません。
しかしながら、次のような理由からマイチョークも所有することをお勧めします。
お店のチョークは塗りづらい
チョークの塗り方のところでも紹介しましたが、正しくない塗り方をしたチョークは真ん中が凹んでしまい、塗りにくくなっています。
お店のチョークの大半は、そのようなチョークが多く、正しく塗ろうとしても上手く塗れずにストレスとなります。
チョークを塗る行為をショットのルーティーンの一つにしている人の場合は、
そのルーティーンが崩されてしまうというリスクにもなりかねません。
そういう点でも塗り慣れた自分のチョークがあると安心できます。
チョーク毎の性能差を回避する
あまり意識されていないかもしれませんが、チョークは銘柄毎に性能が異なります。
チョークの目的は、ボールとティップとの摩擦向上ですので、性能の差がショットのタッチの差に繋がるため、
上級者ほど敏感になってきます。
そのような些細なストレスを回避するためにも、マイチョークを使うメリットがあります。
ティップ保護のため
「モーリティップ」という画期的な積層ティップを発明した毛利秀夫氏によると、チョークの銘柄により成分の配合率が異なるため、
違う成分のチョークを混ぜてしまうのは、チョーク本来の性能も発揮できない上に、ティップに対しても悪影響を与えるとのことです。
その点からもマイチョークを持つことを推奨しています。
万が一、違うチョークを使う場合は、ティップに付着しているチョークをしっかりと拭き取ってから使うのがよいとされています。
一方で、チョークはショットの度にボールやテーブルを汚すものでもあります。
それゆえ、様々な銘柄があるチョークですが、あまりにもボールを汚しすぎるような性質のチョークの使用は控えた方がよいでしょう。
単純な性能だけでなく、そういう点も踏まえてチョーク選びをすることも大切です。
まとめ
たかがチョーク、されどチョーク。
ビリヤード台に何となく置かれていて「周りをみると皆んな打つ前に塗っているから」という理由で手にしていた人も、
次にビリヤードをプレイする際には、チョークについて少し意識をしてみると、ショットのレベルが更に向上するかもしれません。