華やかなトリックショットが注目されることもあるビリヤードですが、実は確率のスポーツのため、プロでも勝ち続けることが難しい競技です。
実際に1年を通して複数ある大会の優勝者は毎回同じとは限らず、上位選手の中で順位の入れ替えが繰り返されています。
つまり、ビリヤードの世界では長く上位にいられることが強い選手と言えますが、なぜ彼らは上位でい続けることができるのでしょうか。
今回は、強い選手にはどんな特徴があるのかを見ていきましょう。
技術がなければプロにはなれない
日本でビリヤードのプロ選手になるには、プロテスト(技術面・知識面)を受けて合格しなければなりません。
技術のテストは、10個の的球をポケットに入れていくのを10回行い、ボーリングの様に点数をつけていく「ボーラード」と呼ばれるゲームをします。
このボーラードを3セット行い、合計点数が基準以上にならないと合格できません。
つまり、プロ選手は球を的確にポケットに入れることができる技術が高いのが基本です。
ちょっと補足説明
日本で「ビリヤード」と言うと、
ビリヤードテーブル上に開いた穴に数字の書いてある球を順番に落としていくのを思い浮かべる人が多いと思います。
このビリヤードテーブル上の穴にボールを落としていくスタイルは「ポケットビリヤード」と呼ばれ、ビリヤードの種類の1つです。
そして、9つの球を順番通りにポケットに落としていく「ナインボール」が有名ですが、実はこれも多くあるゲームの種類の1つに過ぎません。
今回の説明は、このポケットビリヤードでナインボールをプレイするのを前提に、話をしていきます。
球を入れるのが上手なだけでは勝てない
プロテストで採用されているボーラードは、10個の球がポケットに入れば良いルールなので、落としていく数字の順番は関係ありません。
ところが「ナインボール」では、手球を当てるのは数字が小さい順番からと決まっているため、手球の配置を考えて撞いていく必要が出てきます。
ですが、必ず1番→2番→3番→4番→5番→6番→7番→8番→9番 と落とさなくてはいけないルールではありません。
ゲーム中のショットはテーブル上の一番小さな番号の的球に当てなければならない。この制限の中で先に9番をポケットに入れた人が勝利。
このルールでは、手球を当てるのが小さい数字であれば、ポケットに落とすのが違う数字の的球でもかまいません。
例えば手球を3番の的球に当てることで、今度は3番が9番に当たって9番の的球をポケットに落とすこともできます。
この例で必要なことは、下記3点。
- 正確に当てる技術
- 手球と的球を動かす力加減
- どこに当てたら球を動かせるか、コースを読む力
ルールを理解するのはもちろん、
ゲームの中で自分に有利なチャンスを見つけ、チャンスをものにすることができなければ勝負に勝つことはできません。
強い選手の特徴と見分け方
プロには技術があって当たり前ですが、その中でも強い選手は一体何が違うのでしょうか?
ここからは、強い選手に見られる特徴を説明していきますので、見分け方の参考にしてみてください。
世界の中に1つとして同じものがないように、ビリヤードの試合も一期一会です。
- 対戦する相手
- 会場
- 会場の雰囲気
- 会場の環境
- ショット後の球の位置
全てが毎回異なってきます。
条件が異なっても勝つためには、高い技術力と適応力が必要です。
詳しく見ていきましょう。
高い技術力とは
手球コントロール力
ビリヤードの手球は、撞くポイントによって動きが異なります。
例をあげてみます。
- 前に進ませたい時→手球の上部を撞く
- 的球に当てた後に戻ってこさせたい時→手球の下部を撞く
他にも無回転にさせたり、左右に回転をかけたり、手球をジャンプさせたりすることで狙った的球に当てるバリエーションが広がります。
また、クッション(ビリヤード台内側の壁)に当て、跳ね返りを利用して的球を撞くこともありますが、
この時の力加減や角度も手球コントロール力が問われます。
とにかく、手球を自分の思い通りに動かせるようになるのがビリヤードで勝つための第一歩です。
的球の動き方の把握
手球のコントロールの話とかぶりますが、手球を当てる位置によって的球の動きは変わります。
例えば、3番の的球で9番の的球をポケットに入れたい場合、「手球をどのように3番に当てたら9番を動かせるか」と考える必要があります。
力加減の調整
ビリヤードテーブルはとてもデリケートで、種類も豊富です。
ビリヤード場によって置いてあるテーブルが異なるのはもちろん、大会仕様のものでどんなにメンテナンスしても、
その日の気温や湿度により球の動きが異なってきます。
自分の思い通りに手球や的球をコントロールするためには、ビリヤードテーブルによってショットを調整しないといけません。
適応力とは
どんなに高い技術力をもってしても、練習通りにいかないのがビリヤードの大会。
そんな時に落ち着いて微調整を繰り返しながら、ゲーム運びをしていける力が適応力です。
適応力を高めるためには、さまざまな状況を想定して練習を重ねる必要があります。
自分の技術に自信があれば、平常心でゲームをコントロールすることができるようになります。
対戦ゲームなので、戦略を立てて相手と駆け引きする力も必要になってきますが、
それにはやはり自分の思い通りに球をコントロールできるのが大前提です。
ビリヤードの神様
最初にビリヤードは確率のスポーツのため、プロでも勝ち続けることが難しいといいましたが、
「ビリヤードの神様」と呼ばれるほど勝ち続けたプロがいます。
フィリピン出身の、エフレン・レイズ(Efren Reyes)選手です。
1954年8月26日生まれの67歳(2021年時点)なので、残念ながら、現在は国際大会にはほとんど出場していません。
ですが、多くのプロビリヤードプレイヤーが口をそろえて「彼のプレイを超えられない」と言うほど、卓越した技術を持っています。
絶体絶命なピンチの場面で、多くの人が思いもよらない手球コントロールを思い描き、
それを実際にテーブル上で実現してしまうことが多々ありました。
まとめ
今回は、ビリヤードが強い選手にはどんな特徴があるのかについての解説でした。
簡単な見分け方としては、「技術力と適応力が高い選手」が強い選手となります。
ランキング上位で活躍し続けている選手たちは、基礎練習のみならず、多くの場面を想定した練習を日々繰り返しています。
今後、ビリヤードの大会を見る際には、そんな選手たちの背景を思い浮かべながら観戦してみてはいかがでしょうか。
きっと、さまざまな発見があると思います。