皆さんはクリケットという競技を知っていますでしょうか。
クリケットはイギリス発祥で、13世紀頃に羊飼いの遊びとして始まったとされるスポーツです。
ピッチャーやバッター、守備の選手などがいることから、野球の原型とも言われています。
日本では聞き馴染みのないスポーツですが、国際クリケット評議会が2018年に発表した国勢調査では、
世界100カ国以上の国と地域で競技が行われており、世界の競技人口は3億人を超えています。
これはサッカーやバスケットボールとほとんど同じ人数で、競技人口だけで言えば世界トップクラスのスポーツと言えるでしょう。
今回は、クリケット大国・インドにおけるクリケット人気の背景と、魅力について解説していきたいと思います。
クリケット大国・インド
世界各国でプレーされているクリケットですが、中でも競技人口・ファン共に多いのが、インドです。
世界最大のクリケットのプロリーグ「インディアン・プレミアリーグ」があり、トップクラスの選手の多くはこのリーグでプレーしています。
また、4年に一度行われているクリケット・ワールドカップは、サッカーのFIFAワールドカップ、
夏季オリンピックに次いで世界で3番目に視聴者数の多いスポーツイベントでもあります。
このクリケット・ワールドカップにおいて、インドは優勝経験が複数回あり、世界ランクでも常に上位に食い込むほどの強豪なのです。
クリケットがインドで人気がある理由
なぜ、インドではこれほどまでにクリケットが人気なのでしょうか?
その理由は、発祥国のイギリスにあります。
かつてイギリスが大英帝国だった時代、インドはイギリスの植民地でした。
その頃からクリケットはイギリスを代表するスポーツであったため、当然ながら植民地であるインドにも、身近なスポーツとして根付いていくことになります。
また、クリケットはもともとイギリスの貴族や富裕層など、上流階級がたしなむスポーツでしたが、バットとボールがあれば始められる手軽な競技でもありました。
専用の競技場を必要とせず、貧困層の子どもたちでも遊ぶことができるため、子供の人口が多いインドで一気に広まっていったと考えられているのです。
クリケットはどんなスポーツ?
冒頭で触れたように、クリケットは野球の原型と言われており、おおまかな雰囲気は野球と似ています。
例えば、
- ピッチャーがボールを投げる
- バッターがボールを打つ
- バッターが打ったボールを、野手(守備をする人)が捕球してアウトにする
これは野球と共通している点です。
しかし、「投げる・打つ・守る」といった大枠こそ共通しているものの、「投げ方、打ち方、守り方」は野球とだいぶ異なっています。
具体的に、野球と大きく異なる点としては以下です。
・助走して投球してもよい
・肘を曲げて投球してはいけない
・三振によるアウトや、四球・デッドボールによる出塁がない
・基本的に、打者が打ちにくいようにボールをワンバウンドさせて投球する(四球がないので何度でもワンバウンド投球できる)
・ファウルゾーンがなく、打者は360°どこに打ってもよい
・アウトになるまで何度でも打ってよい
・一度アウトになったらその試合ではもう打席は回ってこない
・打った後、バットは持ったまま走らなければならない
・キャッチャー以外は、打球を素手で捕球しなければならない
・キャッチャーはミットを両手につける
・一般的な試合は1イニングしかない(1回の表裏しか無い)
・伝統的な試合は最大5日間を1試合として行われる
・伝統的な試合はランチ休憩やティータイムがある
文字だけではイメージが難しいと思いますので、実際の試合の動画も観てみましょう。
実況も観客のインド人も大盛り上がりしていますが、正直なところ、ルールを知らないと何がスーパープレーなのかも分からないかと思います。
ただ、ピッチャーが助走して投球したり、360°どこに打ってもヒットになる可能性があったりと、
野球のルールを知っている人から見ると、「えっ!?」と驚いてしまうルールもあり新鮮ですよね。
また、クリケットのボールは、野球の硬球と同じぐらいの硬さですが、野手は素手で捕球するといったワイルドな一面もあります。
スター選手の年収はケタ違い!?
クリケットは、選手の平均年収が非常に高いスポーツとしても有名です。
インディアン・プレミアリーグでプレーする選手の平均年収は4億円以上といわれており、野球のメジャーリーグの平均年俸と比べても遜色ありません。
スター選手ともなると年収が30億円を超えることもあり、物価の安いインドにおいて、まさに桁違いの待遇といえるでしょう。
また、インドという国自体がまだまだ発展途上であることから、将来性のある魅力的な市場とされており、数々のグローバル企業がスポンサーに名を挙げています。
ダイキンや三菱重工、日産自動車といった日本の大企業もインディアン・プレミアリーグとスポンサー契約を結んでおり、
インドにおけるクリケット市場はますます拡大していくことが予想されるでしょう。
未来のスーパースターを夢見て、子どもたちが一生懸命練習する背景があるのも、クリケットがインドで人気がある理由の一つと言えますね。
日本の市場規模は?
日本クリケット協会によると、日本のクリケット競技人口は2020年時点で約3,500人ほど。
世界の競技人口である3億人と比べるとまだまだマイナースポーツの枠を出ていないと言えます。
競技として同じ性質を持った野球が深く根付いていることも、日本でクリケットが普及しない原因としてあるかもしれません。
しかし、協会の普及活動によって、少しずつではありますが着実に競技人口は増えており、話題となるニュースも出てきています。
現在、社会人や大学生、ジュニアチームなど200チームほどが活動しており、
栃木県佐野市では「クリケットのまち」として街ぐるみでクリケットの普及活動に取り組んでいます。
2019年にU-19男子のクリケット日本代表が、年代別・男女通じて初めてクリケット・ワールドカップに出場したことも大きな成果でしょう。
また、2020年には元プロ野球選手の木村昇吾さんが、引退後クリケット選手に転向し、
インディアン・プレミアリーグを目指すと発表したことも大きな話題となりました。
日本での本格的な認知はまだまだこれからではありますが、競合が少ないために、話題性があり参入がしやすいスポーツであると言えそうです。
まとめ
このように、クリケットはスポーツ界屈指の競技人口でありながら、そのほとんどがインドに集中しているようです。
そのため、オリンピック競技としては1900年のパリオリンピック大会の1度のみしか行われていません。
現在、国際クリケット評議会は再びクリケットをオリンピック競技にしようと動いており、
2028年のロサンゼルスオリンピックでのクリケット競技開催を目指しています。
もしオリンピックでクリケットが行われ、日本代表の試合が中継されたら、日本での認知度も上がるかもしれません。
世界的な市場規模も、日本での市場規模も、いずれもこれから目が話せない夢のある競技、クリケット。
日本クリケット協会では、定期的にイベントを開催しているようなので、興味があれば一度参加してみて、その奥深さを体験してみるのも良いかもしれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございました。