マラソンを走っていると、ランナーの身体にはさまざまなアクシデントが起こります。
脚のけいれん、熱中症、エネルギー不足により動けなくなるハンガーノックなど、挙げればキリがありません。
どんなに屈強なランナーでも、一度は何かしらの症状を経験したことがあるのではないでしょうか。
中でも、男性ランナー特有の、レース中に乳首が痛くなるトラブルは非常に厄介です。
ひどい場合は出血してしまい、そのままフィニッシュまで痛みに耐えながら走り続けることになります。
マラソンのテレビ中継を観ていると、男性の実業団選手が、
まるで胸部に日の丸を二つプリントしたかのように、ウェアを血で真っ赤に染めて走っている姿が稀に見られます。
その姿は、観ているこちらのほうがズキズキと痛くなってくるほどです。
なぜそのようなことが起こるのか?
今回は、マラソン中の乳首の痛み・出血の原因と、発症を防ぐ対策についてご紹介していきます。
マラソンで乳首が痛くなる原因
原因はウェアと乳首との摩擦
乳首が痛くなる原因は、身につけているウェアとの度重なる摩擦によるものです。
走っている最中、身体は前に進みますが、同時に上下にも揺れます。
当然、身につけているウェアもそれに合わせて揺れますので、このわずかな接触が何度も積み重なり、痛みや出血が生じることになります。
女性ランナーはスポーツブラでしっかりとガードされているようなので、このようなことはほとんどないようです。
しかし男性ランナーは直にウェアを着用することが多いためこのようなトラブルが起こりやすいといえるでしょう。
仮にレース中の歩幅を平均1メートルとすると、マラソンを完走するには単純計算で約4万2千歩必要です。
つまり、1回のマラソンで4万2千回乳首とウェアが擦れていることになります。
そう考えると、「塵も積もれば山となる」ではないですが、痛みや出血が生じることにも納得できますよね。
ランナーの体型やゼッケンの種類で摩擦が強まることも
特に、タイムではなく完走することが目標のややぽっちゃりとした体型のランナーは、ウェアの揺れに加えて自身の胸も揺れますので、
痛みが起こりやすくなります。
また、レースによってはタイムを測るための計測チップが、靴紐にくくりつけるタイプではなく、ゼッケンに埋め込まれている場合もあります。
そうなると、チップの重みでウェアと乳首の擦れはより一層強いものになってしまうでしょう。
乳首の痛みを防ぐ4つの対策
では、レース中の乳首の擦れ・出血を防ぐためにどのようにすればよいのでしょうか?
大まかに分けると「乳首を保護する」か「ウェアを工夫する」どちらかの対策を取る必要があります。
ニップレスや絆創膏を貼る
まずご紹介するのは、ニップレスや絆創膏を貼って乳首を覆い隠しておく方法です。
男性で普段ニップレスをしたことがある方はほとんどいらっしゃらないと思うので、多少の抵抗があるかもしれません。
しかし、今や男性用のスポーツニップレスはごく普通に販売していますし、実業団やプロランナーでも貼っている選手をよく見かけます。
通気性も良いですし、肌色なので透けても目立たず、剥がすときも痛くないという優れものです。
まさに、マラソン時の乳首保護に特化したアイテムといえるでしょう。
「わざわざ専用ニップレスを買うのはちょっと・・・」という方は、絆創膏でも十分です。
ただし、汗で濡れてレース中に剥がれないようにしましょう。剥がすときに多少痛くとも粘着力が高いものを選ぶと良いと思います。
巻いた包帯を固定するサージカルテープや、関節を固定するキネシオテープが自宅にある方は、そちらで代用しても良いでしょう。
ワセリンや保護クリームを塗る
ワセリンや、専用の保護クリームで対策するのも一つの方法です。直接地肌に塗ってあらかじめ滑りやすくしておけば、摩擦を軽減できます。
また、ワセリンや保護クリームは乳首だけではなく、股ずれや足裏のマメを防ぐことにも役立ちます。
肌系のトラブル防止に幅広く使える、万能アイテムと言っても良いでしょう。
ただし、ワセリンはウェアに油ジミがつきやすいようです。直接乳首を守るわけではないので、ニップレスと比べると防御力も落ちます。
普段から擦れが激しい方や、完走タイムが遅めの方は、ニップレスなど貼る系のアイテムでしっかりと保護しておいたほうが良いでしょう。
ぴったりめのウェアを着る
「そもそも摩擦を起こさない」というのも一つの考え方です。
ウェアが上下することから摩擦が起こるので、身体にぴったりと密着するタイプのコンプレッションウェアをインナーとして着用しておけば
擦れを最小限に防げます。
また、コンプレッションウェアの本来の役割として、身体に適度な圧力をかけることで疲れを軽減したり、身体を軽くしたりする効果があります。
中には「肩甲骨の動きをサポートする」というウェアもあり、ランニングフォームの改善にも役立ちます。
冬場のレースでは防寒の役割も果たしますし、体型をスマートに見せてくれる効果もあります。
コンプレッションウェアは初心者ランナーにとって非常にメリットが多いアイテムと言えるでしょう。
男性用スポーツブラを着る
「えっ?」と思われた方が多いかもしれませんが、今では男性用のスポーツブラもあります。
スポーツでの胸部のサポートを行うのはもちろん、姿勢を矯正して洋服をスマートに着こなすためなど、ファッション面でも使われているようです。
コンプレッションウェアのホールド感は欲しいけれど、着て走っていると苦しい・暑いという方は、
圧迫面積が少ない男性用スポーツブラを試してみるのも一つの方法かもしれません。
一つずつ試してみて、自分にあう対策を
ランナーの乳首の擦れに対する様々な方法をご紹介しました。
あとは実際に試してみて、ご自身に合う対策を見つけましょう。
普段から練習中の発汗量が多ければ、絆創膏だとすぐに剥がれて頼りないかもしれません。
冬場、スポーツパーカーを羽織ってランニングされてる方であれば、摩擦対策も兼ねてコンプレッションウェアに切り替えてみるのも良いでしょう。
ご自身の体質や状況に合わせて、最適な方法を選べると良いですね。
さいごに
「呼吸はまだ余裕がある」「脚もしっかり残ってる」それなのに、「乳首が痛すぎて走れない・・・」ということになったら、悔しすぎますよね。
何より、場所が場所だけにかなり恥ずかしいエピソードになっていまいそうです。
筆者も、乳首ではないですが同じような経験があります。
雨が降りしきるマラソンで、ひざ丈ほどの雨ガッパを着て、一度も脱がずに走り終えたところ、
フィニッシュ後に右ひざから出血していることに気がつきました。
転倒などしておらず、全く心当たりが無かったので不思議に思いましたが、雨ガッパの裾が何度もひざに当たって出血したのでしょうね。
レース中に痛みを感じなかったのが幸いでした。
このようにマラソンは、「え、こんなことが原因で?」というようなトラブルが、たびたび起こります。
想定していない事態が起こるのは、理屈から言って防ぎようがありません。
大事なのは、経験したトラブルを二度起こさないように入念に準備することです。
過去のレースで乳首が擦れて痛い経験をしたランナーの方は、
「気をつけて走れば大丈夫」と根拠のない慢心をせず、しっかり対策しておきましょう。
今回の記事が、より良い参考になることを願っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。