テニスの試合中、サーブをする選手がサーブをする前にレシーブ側の選手にボールを見せて互いにうなずく場面があります。
実況者が「ニューボールに変わります」と実況する場面です。
これは、「ニューボールに変わりました。球速も変わります。確認お願いします。」といったテニス独特の「所作」のようなもので、
他競技の方から見ると「なぜわざわざ親切に教えてあげるんだ?」と不思議に思われる方もいるようです。
テニスをやっている方なら、この「所作」は一般プレーヤーには当たり前とまではいかないまでも、なじみがあるといえるでしょう。
なぜなら、真空の缶から出したばかりの真っ黄色なフェルトで覆われたテニスボールは、
固くてよく弾むことから、サーバーに非常に有利な場面となるからです。
今回は、テニスの試合でニューボールに変えるタイミングと、グランドスラム大会での使用球について解説をします。
テニスの試合の流れ
プロのテニス試合では、「ニューボールズプリーズ」と主審がアナウンスします。
そのアナウンスに基づいて、ボールボーイたちがこれまで使用していたボールを回収し、ニューボールに交換します。
テニスの試合は、サーバーが1ポイント取るごとに、
15-0(フィフティーン ラブ)、30-0(サーティ ラブ)、40-0(フォーティ ラブ)と時計の針が15分ごとに周るように
カウントし(なぜ40で45でないかについては諸説あり)、さらに1ポイントとると1ゲームを獲得します。
そして、6ゲームを先取すると、1セットを獲得することになります。
もし5-5となったら、7-5と2ゲーム差になるまで、
さらに6-6となってしまったらタイブレークという方法で7ポイントを先取した人がそのセットを獲得します。
大会によりますが、男子の場合、ベストオフ3セットマッチまたはベストオブ5セットマッチで試合が行われます。
女子の場合はベストオフ3セットマッチで戦われます。
つまり、3セットマッチのうち先に2セットを先取したプレーヤーの勝ちということになります。
いずれにしても、テニスは試合時間が決まっているスポーツではなく、
長い試合では日没になってしまって翌日戦うということも行われるほど過酷なスポーツです。
テニスボールをニューボールに交換するタイミング
それでは、テニスボールをニューボールに交換するタイミングはどのようになっているのでしょうか。
プロの試合と一般の試合を例に解説します。
プロの試合の場合
プロの試合の場合、トッププロ選手がガンガン打ち合うので相当ボールは摩耗します。
したがって、試合が終了するまで同じボールを使用するということはありません。
最初に6球のニューボールを開けて、ウォームアップを対戦相手と5分間行います。その後そのボールをそのまま試合にも使用します。
はじめのニューボール交換は、7ゲーム終了後に行われます。
その後は9ゲーム終了毎にニューボールに変更します。
なぜ最初だけ7ゲームで交換するのかというと、試合開始前のウォームアップを加味しているからです。
例外として、タイブレークの前にはニューボールに交換しないというルールがあります。
その場合にはタイブレーク終了後の次のセット開始前にボールチェンジが行われます。
学生や市民大会の場合
プロの場合は、先に述べたように7-9-9(セブン ナイン ナイン)でニューボールに交換することが多いですが、
プロだからといってすべての大会で7-9-9のルールであるとは限りません。
コートサーフェスがハードコートであれば、摩耗は激しいですが、
クレーコートであれば摩耗がハードコートと比較するとそこまで激しくないといったことが理由です。
したがって、大会ごとにレギュレーションは異なります。
学生の大会は、7-11-11(セブン イレブン イレブン)や女子の場合だと9-11-11(ナイン イレブン イレブン)という場合も
多く見受けられます。
市民大会や高校生以下の大会では、1試合を1缶(2球)で回すことも多いですし、
第3セットに入った場合のみニューボールに交換するというケースもあります。
「ニューボール」使用後の行方
プロのテニス大会では多くの試合球が使われることがわかりました。その数、4大大会といわれるグランドスラム大会では、
1試合平均25球ともいわれています。
全豪オープン
年始の1月に開催される全豪オープンでは、大会を通じて48,000球が使用されるとのことです。
こちらの大会では、2018年からダンロップ(Dunlop)が大会使用球として使用されています。
ダンロップ球に変更してから、日中との寒暖差で特にナイトゲームではスピンがかかりにくいと、
ロジャー・フェデラーをはじめとした幾人かの選手が不満を漏らしているそうです。
ダンロップ球が採用される前は、ウィルソン(Wilson)が大会使用球でした。
大会使用球の多くは、会場で売りに出されて売れてしまうそうです。
全仏オープン
5月から6月にかけて開催される全仏オープン。およそ65,000球のニューボールが準備されているとのことです。
他のグランドスラム大会と比較すると、大会使用球が頻繁に行われている印象があります。
例えば、2011年以前はダンロップ(Dunlop)が使用されていましたが、
2011年から2019年は自国のバボラ(Babolat)が使用されたものの、2020年からはウィルソン(Wilson)に変更となっています。
全仏オープンは他の大会と比較して最も環境活動に力を入れており、すべてのボールは回収されたうえで、
絨毯にリサイクルし、フランス国内のスポーツ施設等に利用されているとのことです。
ウィンブルドン(全英オープン)
6月から7月に開催されるウィンブルドンでは、大会を通じて54,000球が使用されるそうです。
大会使用球はスラゼンガー(Slazenger)で、100年以上もウィンブルドンで採用されています。
伝統を重んじるウィンブルドンならではとのこと、大会を支えてくれたパートナーを大切にしていると評判です。
そして大会使用球は、会場で売りに出され、その売上金は学校等チャリティーとして寄付されるそうです。
全米オープン
9月に開催される全米オープンでは、なんと70,000球が使用されているとのことです。
大会使用球はアメリカブランドであるウィルソン(Wilson)。1978年から40年以上も使用されているとのことです。
大会使用球は、会場で購入できるのですが、付加価値をつけて販売されているとのこと。
それがどういうことかというと、例えば「ロジャー・フェデラーが準決勝で勝った試合球!」として特別な記念ボールとして
販売されているとのことです。
テニスのニューボールに関するまとめ
プロテニスの大会では、ニューボールの交換のタイミングは、7-9-9がスタンダードであるということがわかりました。
一方、学生や一般の大会では大会ごとにレギュレーションが異なり、7-11-11、9-11-11のほか、2球のみで回す、
ファイナルセットに入ったときにニューボールに交換するなど、さまざまであることがわかりました。
また、トッププレーヤーの参戦するグランドスラム大会では、ニューボールの交換頻度が高いことから、
大会を通じて50000~70000球も使用されるとのことで、ニューボールの使用頻度が高いことがうかがえます。