東京オリンピック・パラリンピックの開催もあり、
これまでテニスを観戦したことのない方もテニスの試合を目にする機会もあったのではないでしょうか。
4年に1度のオリンピックは別枠といえる存在ですが、本来プロテニスは年間を通じて世界を転戦するツアースポーツです。
世界を転戦するのも、試合そのものも過酷です。プロテニス選手の活躍できる年齢のピークは25才といわれた時代もありましたが、
最近のテニス選手のピークはどれくらいなのでしょうか。
今回は、近年のプロテニス選手のピークについて検証してみたいと思います。
過酷なプロテニス選手のツアー転戦
テニスは上品なイメージとはうらはらに、屋外で勝敗の決着がつくまで行われる非常に過酷なスポーツです。
プロ選手ともなれば、プロテニスツアーのトップである4大大会であるグランドスラム大会でいかに結果を残せるかを目標に
日々プロテニスツアーを転戦し、努力を重ねています。
ツアーは、1月の全豪オープンに始まり、5月のローランギャロス(全仏)、6月のウィンブルドン(全英)、
9月のUSオープン(全米)の4つのグランドスラム大会を中心にツアーが組まれています。
トップの選手であれば、これら4大大会を中心に転戦し、全米の後は日本や中国などアジアでの4大大会の次のランクのカテゴリーを
周るスケジュールを組み、近年は年間のトップ8の選手が参戦するファイナルズが年末に開催されてシーズンが終了します。
プロに成りたての駆け出しの選手は遠征費用を鑑み、まずは自分の地元や活動拠点を中心に下部カテゴリーでポイントを稼ぎながら
上位の大会への出場資格の機会をうかがうといった道のりを描くのです。
プロテニス選手の活躍できる年齢のピークは25才?
プロテニス選手のピークは25才?といわれた時代もありましたが、近年は25才を超えてもまだまだ進化し続ける選手が増えています。
昨今のラケットやシューズの技術の進化に伴い、
プレーも進化していることや、テニスというスポーツが若さというパワーだけではなくマインドセットが必要な点もあるでしょう。
30歳以上のトッププレーヤーの顔ぶれ
現在の男子のトッププレーヤーで30才以上の選手の顔ぶれを見てみましょう。
男子世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手(34才)をはじめ、
長年ランキング1位でありグランドスラム大会最多優勝回数を誇る現在もトップ5を維持しているロジャー・フェデラー選手は39才であり、
ライバルとして君臨する現在もトップ3を維持しているクレーの王者ラファエル・ナダル選手は35才と、
彼らが年を重ねてもトップのランキングの変動がほとんどありません。
車いすテニスのパイオニアとして長年世界ランキング1位に君臨し、
東京パラリンピックでも若手の強豪らを抑えて金メダルを獲得した国枝慎吾選手は37才です。
女子は、30才以上でトップであり続ける選手は限られていますが、
ダブルスで世界ランキング1位の実績がある杉山愛選手は34才まで現役のトップレベルで活躍していました。
女子シングルス世界ランキング4位まで上り詰めて26才で引退した伊達公子選手は特異な例ですが、その後復帰し47才に引退しました。
復帰後は20代のように上位の大会で活躍はできなかったものの、プロテニスプレーヤーとして40代でも活躍していた姿は多くの人を魅了しました。
そして現役のレジェンドは、セレーナ―・ウィリアムズ選手です。女子グランドスラム大会最多優勝回数を誇り、
出産を経て復帰して現在40才ですが未だにトップ10の位置につけているのは驚異といえるでしょう。
このように、トップ選手であればあるほど、年齢を重ねても活躍をし続ける選手が増えているのが最近の傾向であるといえます。
「早熟型」と「晩成型」
大学テニスを経て一般企業に就職した後競技に復帰した元プロテニス選手で、現在慶應義塾大学准教授の坂井利彰氏は、
著書「日本人のテニスは25歳過ぎから一番強くなる なぜ世界と互角に戦えるようになったのか 」(2014)で次のように述べています。
20才までにランキング100位以内に入る「早期型」であれば、
テニスのツアーを回るときに効率的に上位の大会にエントリーできるようになるため、息の長い選手になる可能性が高いことを指摘しています。
そして、日本人選手については欧米の選手に比べて体が成熟するのが25才頃と「晩成型」であるため、
ツアーのシステムが「早熟型」有利であることから不利な面はあるものの、25才を過ぎてから伸びる余地があるとしています。
しかしながら、やはり現在のツアーのシステムが「早熟型」に有利であることから、「早熟型」で素養のある選手であれば、
早くに上位の大会で常連となり30才を超えてもトップで活躍する可能性が高いといえるでしょう。
先ほど紹介した30才以上のトッププレーヤーは30才以上で頭角を現したわけではなく、
やはり20代前半からトッププレーヤーであったことも、この「早熟型」で説明できるでしょう。
テニスはマインドセットが重要なスポーツ
テニスは孤独なスポーツです。
いかに、コート上で1人で心技体が満ち足りた状態で戦略を練って勝利することができるか、
マインドセットが重要なスポーツであるといえるでしょう。
パワーや体力的な面のみならずマインドセットを自分でコントロールできる、成熟した年代に結果を出すことができる選手も多いのもうなずけます。
ラケットやシューズなどの性能の向上もピーク年齢を上げている
ラケットやシューズなどの性能の向上は、
他競技でも世界新記録が次々と生まれていることからパフォーマンスに大きな影響を与えているといえるでしょう。
そして、そのようなスポーツギアの性能の向上は選手の怪我や摩耗を防ぎ、選手生命をも伸ばしていると考えられます。
テニスも同様で、30代以上の選手が活躍できる土壌が整ったといえるのではないでしょうか。
まとめ プロテニス選手のピークは30才前後
プロテニス選手のピークが25才といわれた時代は昔のこと。
現在はトッププレーヤーであればあるほど、20才前後で頭角をあらわし、トップレベルを維持したまま現役生活を送っています。
平均すると、現在も30才以上のトッププレーヤーが活躍していることからも、平均のピークは30才前後と上昇しているといえるでしょう。
一度ファンになった選手や、若い頃から活躍している選手をトッププレーヤーとして長く応援できます。
今後どれほど選手のピークが伸びていくか、
往年のプレーヤーが若い選手と対戦する場面を観戦できるのもテニスの醍醐味といえるのではないでしょうか。