卓球のラケットには大きく分けて、木製ラケットとカーボンラケットがあります。
カーボンとは、特殊素材一般を指して使われることがほとんどで、ALCやZLCのように素材名に「カーボン」が含まれるものもあれば、
ZLFのように、素材名に「カーボン」が入っていなくても、広い意味でのカーボンラケットに含ませているのが現状です。
一口にカーボンラケットと言っても、様々な種類があります。
この記事では、カーボンラケットそのものに対する大まかな説明から、様々な種類のカーボンラケットについて説明していきます。
カーボンラケットの特徴・木製ラケットとの違いは?
カーボンラケットは、打球感、球の軌道、球のスピードの面で特徴的です。
打球感
まず打球感に関してですが、木製ラケットはソフトな打球感であることに対し、カーボンラケットはかなり硬い打球感です。
ラバーを貼っていないカーボンラケットで球突きをしてみると、「キーン」という音がします。
普段、木製ラケットを使っている人には、なかなか慣れないかもしれません。
球の軌道
カーボンラケットから放たれる球の軌道は、かなり直線的です。
木製ラケットの打球は放物線を描くため、対照的と言えるでしょう。
放物線を描くということは、一定の距離で球が落ちてくれるということ。
すなわち、台に収まりやすいので、安定したラリーを続けることができるのです。
逆に言えば、直線的な軌道を描くカーボンラケットで、台に収めるよう打球するには訓練が必要となります。
球のスピード
カーボンラケットで打った球は初速が速いことが特徴的です。
これに対し、木製ラケットでの打球は、途中で伸びたりすることはありますが、初速はカーボンラケットに劣ります。
これは、カーボンラケットの球離れの良さに起因する特徴で、裏を返せばカーボンラケットでは球への回転がかけにくいということです。
木製ラケットは、回転のかけやすさが売りですので、対照的な特徴と言えるでしょう。
カーボンが含まれる層による違い
それぞれの素材の違いを説明する前に、まずカーボンが含まれる層の違いについて説明します。
カーボンが合板の外側に来ているものが、「アウターカーボン」、逆に合板の内側に来ているものが「インナーカーボン」と呼ばれます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
アウターカーボン
アウターカーボンのラケットの特徴は、なんと言ってもそのスピードの速さにあります。
スピードを活かして前陣で速攻をかけていきたい選手に向いているでしょう。
スピードが速いということは、回転がかけにくいということでもあります。
アウターカーボンで上手く回転をかけるには、スイングスピードを上げる必要がありますので、それ相応の筋力トレーニングも必要になってきます。
インナーカーボン
インナーカーボンは、カーボン部分が合板に挟まれているので、そこそこ回転がかけやすくできています。
それに対し、スピードの面ではアウターカーボンに劣ります。
コントロール重視だが、木製ラケットよりもスピードが欲しい選手に適しているでしょう。
打球感もかなり木製寄りですので、今まで木製ラケットを使っていた選手が、初めてカーボンラケットに移行する際の導入用としてもおすすめです。
様々な種類のカーボン
特殊素材には、ALC、ZLC、TAMCA5000、CAFなどの種類があります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
ALC
ALCとはアリレートカーボンの略です。
卓球メーカー最大手のバタフライ社が開発に成功し、アリレートとカーボンファイバーを織り込んだ特殊素材です。
特殊素材でありながら、打球感はしなやかで、かつスピードも出るとの謳い文句から、多くの愛好者がいるのがこのALC。
世界の有名なトップ選手の名を冠した商品が数多く出ているのも、このALCシリーズの特徴です。
日本人選手なら松平健太、外国人なら張継科、ティモボル選手のものがよく知られており、
それぞれの選手の特徴に合わせて作られているので、本人も愛用しています。
また、選手名を冠していないALCもあり、特に人気なのが「インナーフォースレイヤーALC」というシリーズです。
このラケットは石川佳純選手も使用しています。
ボールを掴む感覚に定評があり、実際石川佳純選手もドライブ主戦型の選手です。
街中では、比較的経験の浅い選手も使用しているのを見かけることもあります。
ZLC
ZLCはZLカーボンの略です。
こちらもバタフライが開発した特殊素材で、有名な水谷隼モデルが発売されており、人気を博しています。
ZLCはALCと比べて硬い素材で、弾みに優れており、比較的容易にパワーを出すことができます。
それゆえ、コントロール性能はALCに劣ってしまいます。
打球感覚も、ALCはそこまで金属っぽい感じはしないのですが、ZLCのラケットで球突きをすると、「キーン」という音がします。
打法的にはドライブより、ミート打ちに適しており、ここぞという場合に決めたいスマッシュの威力を上げることができるでしょう。
また、ALCかZLCのどちらのラケットを使うかによって、打球ポイントを変える必要も出てきます。
ALCであれば、回転がかけやすいですので打球ポイントが落ちても台に収めることができますが、
ZLCでは高い打球ポイントを維持する必要があります。
これは、ZLCから放たれた打球はALCに比べて、放物線を描きにくいので、台に収めるためにはある程度の高さにボールがある時に打たないと、
オーバーミスを起こしてしまうからです。
ZLCラケットのラインナップとして、先ほどALCでも登場した「インナーフォース」シリーズが挙げられます。
インナーフォースレイヤーALCは水色のグリップが特徴的ですが、
インナーフォースレイヤーZLCは黄色に黒のグリップで、見た目がとても格好良い一品です。
両者の違いですが、やはり扱いやすさではALC、パワー面ではZLCに軍牌が上がります。
TAMCA5000
TAMCA5000とは、破壊力に優れたカーボンで、こちらもバタフライ社が開発に成功したことで知られています。
この素材を搭載しているのは、張継科T5000というラケットです。
TAMCA5000が優れた威力を持っていながら、ラケットの設計はブレードが薄めとなっているので、
球が飛んでいきすぎないコントロールの良さを実現しています。
CAF
CAFとは木材由来の繊維を使ったCAファイバーで、こちらもバタフライ社が開発しました。
この素材が搭載されているのはティモボルCAFというラケットです。
CAFは木材由来ということもあり、特殊素材特有の打球感が少ないですので、
木材ラケットから特殊素材ラケットに移行する際の初めの一本として適しているでしょう。
まとめ
カーボンラケットの特徴や、アウター・インナーカーボンの違い、様々な種類のカーボンに関して説明してきました。
カーボンラケットは、卓球を始めたばかりの人には扱いにくい面もありますので、木製ラケットで回転をかける感覚を身につけた後に、
段階的に移行していくことがおすすめです。
カーボンラケットは、素材の違いだけではなく、それに合わせる木材の違いによって、かなり異なる出来になりえます。
各メーカーが色々な種類のカーボンラケットを開発しているので、ぜひ自分にあった一本を見つけてみてください。