サッカーでは、かつてリベロという役割が重宝されていました。
リベロという単語を聞くと、バレーボールをイメージされる方も多いでしょう。
しかし、サッカーにもリベロという役割があり、リベロを使ってリーグやワールドカップを制覇したチームもあります。
有名サッカー漫画「リベロの武田」では、フォワード志望の主人公がリベロにコンバートして勝利を重ねていき、
「シュート!」では、リベロシステムを使った高校が主人公のチームを苦しめました。
現在ではあまり耳にしなくなったリベロとは、サッカーにおいてどのような役割を担うのか、詳しく解説していきます。
サッカーのリベロとは
サッカーのリベロとは、普段はセンターバックのポジションで守備の仕事をこなし、
攻撃になると前線に駆け上がり数的優位を作り、得点チャンスを増やしていく役割のことを指します。
かつては、現サッカー日本代表監督森保一監督がサンフレッチェ広島で監督をしていた時は、
リベロを使ってJリーグ優勝3回、クラブワールドカップ3位という実績を残しました。
一時期リベロは世界中で重宝される役割でもありました。
センターフォワードを努めていた選手がリベロをやりたくて、わざわざセンターバックにコンバートしたという事例もあります。
リベロとは「自由」
リベロという言葉はイタリア語で、日本語に訳すと「自由」になります。
普段は守備を頑張り、相手選手に得点チャンスを与えず、
攻撃になるとすかさず前線に上がりパスワークやドリブルで相手ゴールに迫る、守備も攻撃も自由に参加する人という意味からリベロと呼ばれるようになりました。
リベロで世界を制したチーム
リベロは、1970年代から1980年代まで主流だった役割で、最初にリベロシステムを確立させたのが当時の西ドイツ代表です。
西ドイツ代表は、ヨーロッパ選手権、ワールドカップでもリベロを使ったシステムで相手を圧倒し、ワールドカップを制覇するほどの金字塔を打ち立てました。
そして、イタリア代表やアルゼンチン代表もリベロを使ってワールドカップで好成績を残しました。
リベロを採用しているクラブ
1970年代に世界を席巻したリベロですが、現在リベロを採用しているクラブはほとんどありません。
理由として挙げられるのが、守備システムの進化です。1970年代は1対1で相手にディフェンスをするマンマークが主流でしたが、
ACミランがゾーンプレスを確立させてからは、面で守るゾーンディフェンスが主流になってきました。
そのため、攻撃側でリベロが上がって数的優位を作っても、ゾーンディフェンスの前ではあまり役に立たなくなってしまいます。
もう一つの理由は、得点割合です。現代サッカーの得点は、ほとんどがカウンタと、コーナーキック、フリーキックなどのセットプレイです。
流れの中で相手を崩したゴールは全体の約15パーセントで、名門チームでも20パーセントも満たないのが現状です。
従って、確率の低い攻撃よりも、カウンターに備えての守備を重視するためにリベロを置かずに守備に専念させるのが定石となっています。
リベロの役割
サッカーにおけるリベロは、守備も攻撃も一流の技術が求められるため、相当の練習量が必要になってきます。
しかし、試合でディフェンスを頑張り、攻撃では相手ゴールに迫り得点を決めた時の興奮と感動は、何事にも変えられません。
リベロでは、どんな役割が求められ、どんな技術を要求されるのか、詳しく紹介します。
守備が第一
リベロは、普段センターバックのポジションに位置し、3バックや5バックでカバーリングを主体に守備の役割を担うスイーパーを担当します。
危険察知能力はもちろんですが、広い視野と相手の攻撃を2手先3手先まで読む力も必要です。
相手選手がどのポジションで、ボールをもらう位置はどこかを的確に見極めて、先回りをしてパスカットやチャンスをつぶす役割を担います。
ゲームを作る
相手チームからボールを奪ったら、いよいよ攻撃です。しかし、リベロはまだ自軍ペナルティエリアに位置しており、相手ゴールまではかなりの距離があります。
そこで、リベロの出番です。味方のミッドフィルダーやフォワードがどこに何人いるか、相手チームの守備はどこまで陣形を整えているかを瞬時に見極めて、
カウンターを狙うか自軍からボールを回して相手ゴールに迫るかを判断します。
判断を誤れば、逆にカウンターになるリスクがあり、ゲームの流れにも影響しますので、パスの正確さと的確な判断が要求されるのがリベロです。
攻撃に参加する
味方にボールを渡したら、相手ゴールまで一気に迫りましょう。しかし、相手側の守備も陣形を整えていますので、中々ペナルティエリアまでたどり着けません。
そこで頼りになるのがリベロです。攻撃に参加して連携を作り、相手の守備陣形を崩して一気にゴール前に駆け上がります。
そして、チャンスを作り得点機会を増やしていくのがリベロの役割です。
パスも一流の技術が要求され、ボールを保持していない時でも的確にポジションをとり、相手ディフェンダーを混乱させるフォワードの能力も必要不可欠となってきます。
リベロの有名選手
サッカーのリベロは、守備や攻撃も一流という事で全世界で有名となり、ストライカーの名前を知らなくても
リベロの選手の名前は知っているという現象まで発展しました。
世界における歴代有名サッカー選手でも、リベロを努めたプレイヤーは多く存在します。
そこで、往年のサッカーファンなら誰でも知っている有名なリベロの選手を紹介していきます。
フランツ・ベッケンバウアー
リベロの選手と言われて一番に思い浮かぶのが、皇帝と呼ばれたフランツ・ベッケンバウアー氏でしょう。
プロキャリア時はセンターフォワードを努めていたフランツ・ベッケンバウアー氏で勝利への貢献が高かったことから、ベッケンバウアー株式会社と呼ばれていました。
クラブチームとは違い、当時の西ドイツ代表では中盤を努めることが多く、1971年からリベロの役割を担うようになります。
質実剛健なドイツのサッカーとは裏腹に鮮やかなテクニックとゲームメイクで観客を虜にし、国際Aマッチでは103試合に出場し14得点を記録しました。
ワールドカップ優勝の他に、UEFAチャンピオンズリーグを3連覇、バロンドールを2回受賞、ドイツ年間最優秀選手に4回も選ばれたキングオブリベロ、
それが、フランツ・ベッケンバウアー氏です。
フランコ・バレージ
イタリアセリエA、ACミランの黄金期を支えたリベロとして有名なのがフランコ・バレージ氏です。
身長が176センチメートルと、センターバックとしては小柄な体格でしたが、判断能力と戦術眼はワールドクラスで、
更に攻撃では敵陣深くまでドリブルで切り込むというスタイルで人気を博してきました。
三浦知良選手がイタリアセリエAのジェノアでプレイしていた際に、試合中の競り合いで鼻を骨折したことがありましたが、
その競り合いの相手がフランコ・バレージ氏です。
井原正巳
日本でリベロの選手と言えば井原正巳氏が有名です。別名アジアの壁と呼ばれており、Jリーグ発足時から長きにわたって、日本のディフェンス界をリードしてきました。
抜群の対人スキルはもちろんですが、パスの精度もアジア屈指の実力を誇っており、時にはドリブルで相手ゴールに迫りシュートを決める姿は、
往年のサッカー日本代表ファンでは語り草となっています。
アビスパ福岡監督時代は、当時J2だった福岡を見事にJ1に昇格させました。現在は柏レイソルで、ネルシーニョ監督の下で後進の育成にあたっています。
まとめ
現在ではあまり見られなくなったリベロ。しかし、サッカーの試合では、ディフェンダーが攻撃に参加しゴールに迫るシーンが度々目撃されます。
体力も技術も最高水準のものが求められるリベロですが、だからこそやりがいもあり、普段得点に絡まないディフェンダーも一躍ヒーローになれるのがリベロです。
サッカーの試合で、ゴールまで攻撃に参加するディフェンダーにぜひ注目してみましょう。もしかしたら、将来リベロになる逸材かもしれません。